「戦前戦後」に感銘を受けた中村百亨ファン待望の新作が、この秋いよいよ発刊される。北は北海道から南は九州まで、地元の人すら知らない名所を作家独特の感性でまとめあげた旅行記だ。誰でも知っているような内容を記してもつまらない。「人の行かないところにも、きっとどこか良いところがある」と探し続けた、いかにも真実を追求する百亨氏らしい手記となっている。海外旅行にばかり目を向ける日本人が多い中、日本もまだまだ見どころがあると言うことを伝えてくれる1册だ。

学徒出陣を体験した著者が、戦後60年を経た日本に警鐘を鳴らす「戦前戦後」。アジア地域の植民地における人権問題や、当時の兵隊の苦行が、現場の声として切々と綴られている。戦前「大東亜戦争」と呼ばれていた戦争が、なぜ戦後「太平洋戦争」と呼ばれるようになったのか。歴史上初めての大敗戦の中に隠されたドラマを説き、それを軽視する今の日本に喝を入れてくれる名著だ。