令和のブームはこれだ! 2022

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FRICO社製エアカーテンを輸入販売
優れた構造機能に着目し販売権取得

最先端の3機種を用意
コロナ対策に利用可能


 全国15社で形成し、空調ダクト用の多種多様な製品や部材、工作機械、設計ソフトなどの製造販売で空調工事業界を支えてきたのが「フカガワグループ」だ。そのトップに立つ『株式会社フカガワ』の代表取締役深川和己さんは、海外の先進的な製品や技術にも目を向けてきた経営者だ。あらゆる角度から高い完成度を求めるその目を惹きつけた製品がある。空気の噴流でエアバリアを作るエアカーテンで世界のトップシェアを誇るスェーデン「FRICO」社の新製品『Pamir(パミール)』シリーズ。国内販売権を取得して輸入し、2021年9月から販売を開始した。
「FRICO社は、85年以上前に創業したエアカーテンの世界的なリーディングカンパニーです。そのエアカーテンの世界市場でのシェアは約 60%に上りますが、企業理念として掲げる快適な室内気候の実現は、空調設備関係の仕事をしている当社の考えと重なります。加えて、国連のSDGs持続可能な開発目標の実現に寄与することを重視し、製造時のエネルギーや材料消費量の削減、エアカーテン自体のエネルギー消費の抑制、エアコン運転時のエネルギー消費の削減などを追求している点も心に強く響きました」
『Pamir』シリーズの詳しい説明は、同社のWEBサイト「ductnet(ダクトネット)」で知ることができる。
『Pamir』シリーズには、『Pamir2500』『Pamir3500』『Pamir5000』の3タイプがあり、長さ1m、1・5m、2m、2・5m、高さ2・5m、3・5m、5・0m多様なサイズが用意されている。
『Pamir2500』は、コンビニエンスストア、薬局、クリニック、店舗、オフィス、ショッピングモール内の店舗などでの水平設置用に設計された機種。推奨設置高さは2・5m。『Pamir3500』は、連結した場合の推奨最大開口幅が5mになり、様々な建物や施設、工場、病院などに適した機種で、推奨設置高さは 3・5m。『Pamir5000』は、連結したときの開口最大幅が7mになる機種。推奨設置高さは5m。いずれもリモートコントロールが可能だ。
 また『Pamir3500』と『Pamir5000』は、上部に取付が不可能な場合にドアの両側に垂直にして設置することができる。3機種とも欧州最大の空調音響研究所で国際的なファンの規格AMCA STANDARDと、空気流量や出口気流速度の均一性、消費電力など空気力学的性能の評価に関するISO規格に基づくパフォーマンステストを行い、性能が認められた。
 深川さんが『Pamir』シリーズで高く評価する第一が構造と機能だ。
「構造と機能では、整流子の代わりに制御・駆動用の電源回路が組み込まれ、永久磁石同期電動機と同じ構造をもつ直流モータのECモータが採用されていることです。高速、高効率ながら小型で大きな出力を得られるのが特徴で、回転数とトルクを瞬時に制御し、デマンド制御とステップレスコントロールを可能にし、ファンを効率的に稼働させることができます。静音設計で稼働音も静かです。また、ファンの形状も、一般的なクロスフローファンとは異なり貫通軸を持たない構造から均一性に優れた噴流生成性能を備えたタンジェンシャルファンを採用していて、初速が早く均一な噴流速度で乱気流を防ぎ、均一なエアバリアを生み出します。さらに、独自の整流技術によるロングレンジエアバリアを実現したことも注目点です。エアフローを単純に多くするだけでは噴流速は安定しませんので、空気流量を適切な圧力に調整する整流と均一な吹き出し、噴流到達距離が長くなるために必要な整流技術を駆使してグリル形状にしています」
 もう一点、深川さんが着目したのが、エアカーテンを最適化するコントロールシステムだ。
「多くの建物でドアを開放したままにしておくと、冷暖房に大きなロスが生まれます。特に外気と内気の温度差が大きい季節は冷暖房費の負担が大きくなります。『Pamir』シリーズには、そうした開閉口部にエアバリアを作ることで温度が異なるゾーンを管理し、風量と風速を完璧なまでにコントロールすることができるサーモゾーンテクノロジー™という技術が組み込まれ、冷暖両方で屋内の温度を心地良く保つことができるのです。この技術の根幹をなすのがFCコントロールシステムです。季節による外気温と内気温の差、人の出入りの頻度、天候や突風、ドアの開閉時間など様々な要因に瞬時に対応できる柔軟なプログラム設定で瞬発力のあるエアカーテン作動を制御することができます」
『Pamir』には PCボード(回路基板)が内蔵されており、ドアが開いているときだけエアカーテンが作動するオート省エネ機能など、使用目的に合わせてコントロールシステムFCを追加することもできるほか、設置後に部品を追加してシステムを拡張したり、カスタマイズしたりすることも可能だという。
 深川さんは、『Pamir』シリーズの導入効果も大きいと指摘する。
「ランニングコストの電気代が従来比で86%減、空調の電気代35%減が可能になります。作業場の開放感も得られるほか、ドアの開閉の手間がなくなり、物資、資材の運搬がスムーズに行え、作業効率がアップします。空気の遮断だけでなく、害虫やホコリ、排気ガスの侵入も防ぎ、室内環境を清潔に保つこともできます。医院では、ウイルス感染防止のためドアと窓を開放して換気すると同時にエアカーテンで室温を維持する使い方も可能です」
 深川さんは、病院や店舗、冷凍倉庫、空港、オフィスビル、駐車場、レストラン、工場などを中心に販路を広げていく方針だ。
(ライター/斎藤紘)

株式会社 フカガワ
TEL/048-257-3196 
Eメール/fukagawa@ductnet.com
ホームページ 
https://www.ductnet.com/


未来を見据えた経営体制の強化
総合建設不動産開発グループへの躍進

経営手腕で成長を牽引
業務改革に不断の努力


 愛媛県今治市で小規模な土木業を営んでいた『中央建設株式会社』の四代目経営者として東京への進出を決断し、懸命の経営努力と鋭い経営感覚で急成長させた手腕で注目される渡部功治さんが2021年8月、総合建設業である『中央建設』と管工事業を営む専門工事会社グループに加え、ホールディングカンパニー『綱ホールディングス株式会社』を設立して新たなステージに立った。
『中央建設』がまずタッグを組んだのは、東京・足立区の「株式会社櫻木管工」。1965年に創業し、給排水衛生設備や空調換気設備、防災設備などの企画、設計、施工を業務に掲げる会社だ。『中央建設』は、石川清美さん、櫻木管工』は櫻木篤さんと、それぞれに職務の監督である取締役社長を置き、グループの代表取締役CEOとして渡部さんが総指揮を執る体制だ。
 こうした経営体制への移行を決断した渡部さんの意図は明確だ。
「新たな事業推進体制で専門業種を内製化し、グループ化することによって、これまでブラックボックス化していた専門職種の可視化が進むことが期待され、課題でありましたコスト削減と価格競争力強化の実現に向けた大きな第一歩を踏み出すことができたと思っています。安価で高品質、付加価値のある建物を提供することで、お客様の満足度の向上に繋がると考えています。今後は、電気設備や足場工事、鉄筋工事といった建築に関する専門業者を傘下に増やしながら、グループの総合力を高めていく方針です」
 常にお客様ファーストに徹し続けた結果、導き出された新体制への移行は厳しい競争時代にうってつけの経営戦略である。そしてさらに渡部さんはこう続ける。
「現在は、その強化された競争力と高い技術力を背景に土地活用の分野にも参画しております。従来のゼネコンだけの体制ではどうしても受身になりがちでスピード感に欠けていましたが、不動産企業様と連携を図り、自らデベロッパーとして風上の立場に立つことで土地の特性や場所、環境、用途に応じて資産価値を最大限に活かした建築物をより素早くお客様にご提案、ご提供することが可能になりました。また、お引き渡しのあとも施工業者の立場でアフターフォローを通じて情報交換を続けることによりお客様との良好な信頼関係を維持することができています」
 公共事業の縮小や人手不足で地方での事業継続に危機感を抱いた渡部さんが新たな活路を切り拓くために東京に進出したのが2010年。一人で上京し、伝手もコネも事務所もない状況で、スーパーゼネコンを訪ね歩いて顔と名前を憶えてもらう努力を重ね、15坪の事務所に社員3人という規模の東京支店を開設したのが2012年。地道ながら血の滲むような必死の努力を重ねた結果、徐々に仕事が入りはじめ、大物俳優の自宅リフォーム工事などで弾みがつき、快進撃が始った。
 2016年には、オリンピック関連の世界初の施設で透明建材「ETFE(高機能フッ素樹脂フィルム)」を国内で初採用し、日本建設業連合会主催の第59回BCS賞など数々の賞を受賞した「新豊洲 Brillia ランニングスタジアム」を元請けで施工した実力が注目され、受注する工事が倍増、2017年には158坪の近代的なオフィスに移転、東京本社に組織替えし、経営規模を拡大してきた。現在、同社は五つの工事部とリニューアル工事部を擁する建築工事本部を主軸に、15のセクションから成る社内組織を形成、社員も100人規模に膨らみ、スピーディーで小回りの効く小型ゼネコン的な体制で、商業施設やマンション、ホテル、オフィス、教育施設、公共施設、工場、倉庫などの新築工事や改修工事、耐震改修工事などで実績を重ねる。このたびのグループ化により事務所も増床し合計340坪まで拡がった。
 こうした成長の推進力となったのが、渡部さんの経営戦略だ。第一が人材確保。若手技術者の確保だけでなく、年齢による給与カットなしの70歳定年を逸早く導入してシニア世代の経験豊富な技術者を積極的採用し、能力に応じて役員クラスにも登用している。自らが働き方改革実行委員会の委員長となり血の通った働き易い職場環境を整備することで良い人材の定着率向上に繋げている。
 第二が業務改革。その一つが、短距離競争では遅れを取るが400mリレーではメダルを取る日本の選手の正確なバトンパスワークにヒントを得たリレーワーク。引継ぎや申し送り事項などの情報をメールや文書で伝達する時に内容の重要度、緊急性によって異なるリレーワークマークを付け、部署を超えて社員全員が情報を共有し、円滑に業務を進めていく体制だ。また、リレーワークを施主、設計事務所、協力業者、行政機関などとの連携を密にし、価値観を共有するための合言葉にもしている。
 もう一つは、情報通信技術ICTを活用した建設業向けクラウドサービスPhotoructionの導入。現場担当者が撮影した工事や施工状況、検査や打ち合わせなどの写真を現場と本社管理部門との間でリアルタイムに共有し、工事の進捗確認や問題点を把握する。加えて、2021年には、テクニカルディレクターというスタッフを本社に配置した。
「これまでは、現場従事者が現場管理と書類作成の両方を担当していましたが、その業務負担は大きく、長時間労働の原因でもありました。この課題を解消するために新たに配置したのがテクニカルディレクターです。各種申請、届け出、日報、工事写真などの施工書類から請求書や出来高管理書類まで、現場における書類作成を担当します。 特定の部署には属さず、あくまでも書類作成のディレクターとして各部署と連携を取りながら現場を牽引し、業務を遂行していく立場です。このテクニカルディレクターの存在は、現場担当者の業務負担の軽減になり、ワークライフバランスの実現に大きく寄与すると思っています」
 不断の経営努力で成長を続ける『中央建設』を中核に、さらなる活躍のカギとなる「総合建設不動産開発事業」も視界に捉えた『綱ホールディングス』を牽引する渡部さんの新たな地平を目指す意欲は膨らむ一方だ。
「高度経済成長時代に建てられた建築物は老朽化が進み、その利用価値の低下が顕著になるなか、停滞している不動産に新たな息を吹きかけることで活性化された資産を未来へと繋げること、それを訴求していくことが私たち『綱ホールディングスグループ』に課せられた使命だと考えています。これからも変わりゆく時流を的確にとらえ、ゼネコン機能とデベロップメント機能を併せ持つ総合建設不動産開発グループとして新たなステージへチャレンジし続けてまいります」
(ライター/斎藤紘)

綱ホールディングスグループ
株式会社 エネフ
中央建設 株式会社
株式会社 櫻木管工


遺跡調査と見紛う丁寧な基礎工事
精緻極めるコンクリ―打設と配筋

完璧追い求める職人魂
角が美しい手掘り作業


「遺跡の発掘調査でもしているんですか」
 住宅の土台を造る基礎工事現場で、丁寧に土を掘り進める様子を見た通りすがりの人に、こう訊かれたという逸話が残る職人がいる。『有限会社信和土建』の代表宍戸信照さん。住宅検査専門会社が優れた建築職人を顕彰する制度でマイスターの称号を授与され、全国工務店グランプリでも優れた職人に贈られる「匠の盾」を受賞した基礎工事の匠だ。その仕事ぶりを紹介し、WEBでも公開した東京メトロポリタンテレビジョンの番組「シゴト手帖 書き留めておきたい言葉たち」で、真の職人魂に触れることができる。
「職人とは、満足しない職業なんです。造ったものに満足できない。完璧にできた仕事なんてない。自分の評価で奇麗にできたと思ったらダメ。次はここ、その次はここと、納得できるまで仕事をしていきますが、永遠に満足せず、完璧を追い求めて職業なのです」
 基礎工事は、建物が完成すれば見えなくなる部分の工事。「どうせ見えなくなる仕事だから、適当に」という姿勢は断じて許さず、「見えなくなる部分だからこそ丁寧に仕上げる」という宍戸さんの妥協を許さぬ仕事ぶりは徹底している。
「基礎とは土木構造物や建物構造物を支持し安定させるための土台となる部分のこと。構造物からの力を地盤に伝え、構造物を安全に支える機能をもつ構造です。建物自身の重量や地震などの色々な外力で建物が倒壊しないよう建物を支える役目も担います。住宅の場合なら、そこに抜かりがあると安心で快適な居住空間は造れません」
作業は、工事に着手する前に建物の正確な位置を出す丁張り、掘削、砂利引き、防湿シート敷設、捨てコンクリ―ト、型枠、鉄筋組み、アンカーボルト設置、耐圧コンクリート、内部の型枠、立ち上がりコンクリート打設、天端仕上げ、打枠、養生など多岐にわたる。
「工事では、図面通り、水平垂直の施工をすることが最も重要です。丁張り作業は昔ながらの水糸を使って誤差をなくしています。工事の初期工程では、住宅の形状に合わせた土台をつくるため掘削作業を行うのですが、機械だけに頼ると土台となる泥の一部が崩れてしまう恐れもあるため、スコップを使って手作業で、角の仕上がりがきれいになるように根気よく掘り進めていきます。その上に砂利を固めた後、水蒸気の流入を防ぐ防湿フィルムを全面に敷き込みますが、測つて同じ大きさにしています。手掘りは難しい地形にも対応できますし、何より仕上がりが美しく、無駄な土も出ません」
 掘削したスペースにコンクリートの土台を形成するコンクリート打設や配筋は精緻を極める。
「コンクリートが固まるのは、セメントを構成する化合物が水と反応して新しい化合物になるからです。まず、その成分をしっかり頭に入れておく必要があります。コンクリートは気温や湿度の高低によって乾燥したり、伸び縮みしたりし、それがひび割れなどの原因になりますので、生コンクリートは、練り混ぜから打ち込み終了までの時間が定められています。外気温が高いと硬化の進行は早くなりますので、外気温が25度以下なら120分以内、25度以上なら90分以内に終えなくてはいけません。また、外気温に応じて打設強度を変える温度補正をしながら設計強度になるように作業を進めます。型枠内に生コンクリートを流し込んだ後は、タンパーという道具でコンクリートを叩いて不要な水や空気を除去して密度を高める締固めを行いますが、締固めだけでは表面に凸凹ができてしまいますので、コテなどを使って表面を均す作業を行います。1ミリの凸凹も、はみ出しもなく、角も90度に美しく正確に仕上げあげます」
 コンクリートを均すコテは、左官コテ作りで約100年の歴史がある兵庫県三木市の梶原鏝製作所の名工の手によるコテを揃え、現場の形状や季節、気温によって使い分けている。
 配筋は、コンクリート土台に組み込む鉄筋を配置する工程。
「コンクリートは押しつぶそうとする力に対しては強いのですが、引っ張る力や曲げる力に対しては弱い素材で、その弱点を補うために引っ張りに対して強い鉄筋を組み合わせて強度を確保するのです。ずさんな配筋の施工をすると、鉄筋が錆びて劣化し、引っ張る力に対して耐えることができなくなり、基礎自体の寿命が短くなるリスクが高まります。従って、配筋作業では、鉄筋の太さや重さ、間隔、補強などを建物の設計者の設計や建築基準法施行令の規定を守り、正確に施工します」
 宍戸さんは、配筋に使う鉄筋も作業効率や仕上がりの美しさの観点から既製品を使わず、自社加工場で加工している。鋼材メーカーから鉄筋用棒鋼を仕入れ、住宅の構造から必要数を割り出し、配置場所や形状を図面に落とし、構造に合うよう加工していく。その数、大小数千本。継ぎ足しが必要ない8・5mの鉄筋も作っている。
 こうした仕事ぶりについて、住宅検査専門会社の審査に当たった認定員は、「スラブ配筋は、全箇所結束がされており、継手は千鳥配置されていました。また、立ち上がり部分の配筋は、多重結束を避けた割り付けがされており、整然とした規則正しい施工状態でした。基礎の仕上がり状態は、目立った気泡もなく、全体的に平滑なコンクリート面でした。アンカーボルトの設置状況も、通りや埋め込み寸法に誤差が殆ど見受けられず、すっきりとした配置でした」などと評価し、宍戸さんは最高レベルの三ツ星の転圧マイスター、配筋マイスターの称号を授与された。
 宍戸さんは、少年期から師匠と仰ぐ父親のもとで修業し、父親が体を壊したのを機に28歳で経営を引き継いだ。以来、基礎工事で30年超の経験を重ねる宍戸さんの厳密な仕事ぶりが評判になり、基礎工事以外にも傾斜地の土留めや階段設置、擁壁構築、土間工事などの工事依頼も舞い込む。
(ライター/斎藤紘)

有限会社 信和土建
TEL/042-763-4443


気候危機が迫る中
いかに世界を動かすか

第四の革命
「カーボンゼロ」を超えて


 COP26国連気候変動枠組条約第26回締約国会議が2021年11月、英国で開催され、世界の気温上昇を1・5℃にとどめる努力をし続けることが合意されたが、課題山積だ。長年、地球温暖化対策に取り組んできた『山口総合政策研究所』の所長山口克也さんが、COP26を機に、課題を整理した。



「COP26では、石炭火力発電の段階的な廃止や途上国への資金支援拡充については合意に至りませんでした。国連組織や各国政府にとどまらず、主要な金融機関、企業、NGO、各国の若者たちなどが地球温暖化対策強化に向けて激しいアピールを続けましたが、多くの国がさらなる対策の強化に踏み出せず、2030年までに世界全体で45%削減しなくてはならないはずの二酸化炭素量は、これまで各国が提出したNDC(国別排出削減目標)を積み上げると13・7%増となったことに世界中が重大な懸念を持っています。

―「気候正義・倫理問題」と「経済問題」の衝突 ―
 世界において現在存在している問題は、ごく単純です。人間社会を存続させるために化石資源使用を削減あるいは終了しなくてはならないという「倫理・正義」と、化石資源使用を続けなければ経済活動が縮小するという「経済的要請」の対立です。この10年間では、多くの金融機関、企業、自治体などが、気候変動問題のもたらす経済的損失を重視するようになり、「経済的要請」においても化石資源使用の削減が求められるようになってきましたが、いまだに「倫理・正義」は「経済的要請」に勝てないでいます。現在の世界は、この両者を、ともに勝者にするための攻防を行っているわけですが、そのような結末に至るための手法が、COP26の前後で二つ大きく現れてきました。

― 経済システムに気候正義を組み込む
(カーボンプライシング)―

 2021年7月にEUの欧州委員会が制度案を公表した国境炭素調整措置(CBAM/国境炭素税)は、規制が緩く、安いコストで作られた域外からの輸出品に対し、EUの排出量取引制度に基づく炭素価格を課して競争環境を公平に保とうとするものです。しかしながら、このCBAMについては、先進国の歳入が増え、途上国の歳入が減るとして、批判を受けています。カーボンプライシングを世界中で公平に行うためには、私が提唱している「世界みどり公社(世界化石資源管理機構)」が必要になります。

ー各国のエネルギー転換・産業転換を補助し、
経済・産業システムの倫理化を図るー

欧州委員会(EU)委員長は、南アフリカの脱炭素を支援する枠組みを宣言しました。85億ドル(約9700億円)を投じて再生可能エネルギーを導入し、石炭火力発電所の閉鎖を前倒しします。これは、欧州が歩み寄ったものですが、脱炭素化が進んでいない発展途上国に対しては、カーボンプライシングに先行して脱炭素化を技術的、資金的に支援することが必要です。

― 産業システムの脱炭素化とは ―
 産業システムの脱炭素化で現在進展中なのは、ざっくり言えば発電の再エネ化、自動車のEV化ですが、運輸業のゼロカーボン化に引き続き今後大きなコストをかけて行わなくてはならないのが、製鉄業とセメント産業のゼロカーボン化です。製鉄業のゼロカーボン化に必須なのが水素還元製鉄であり、これはすでに実用化されている技術です。石炭の代わりに水素を還元剤として使用します。このため大量の水素が必要になります。水素製造のためにCO2が排出されたのでは何もなりませんから、この水素は水の電気分解でつくられるグリーン水素でなくてはならず、このために追加で大量の再エネが必要となります。ゼロカーボンセメントの技術も開発されています。そして石油産業、石油化学産業のCO2低排出化も行わなくてはなりません。石油化学産業に関しては、プラスティックゴミをどう処分するかという難題もあります。これらに関する技術は世界中で共有されなくてはなりません。

― 「世界みどり公社」とは ―
 世界の化石資源を買い集めて専売し、適切なカーボン価格を上乗せして化石資源を販売し、専売利益で各国の産業・エネルギー転換に対する補助を行い、温暖化による被害を受ける国々に対する補助を行い、現在の所有者に対する支払いを行う組織を想定することができ、これを私は仮に「世界みどり公社」と呼んでいます。また、カーボンゼロヘ向かうためには、カーボンプライシングと「世界みどり公社」が有効ですが、地球温暖化対策全般を見渡すと、これらに加えて、少なくとも大きなプロジェクト三つが早急な対策として必要になります。
 その一つが、グローバル・エネルギー・インターコネクションの発展です。再エネ資源の多く存在する場所とエネルギーの需要地は、離れていることが多く、また再エネには変動性の問題がさけて通れないことから、かねてから世界の多くの再エネ発電所を結び、発電の不安定さを軽減させることが考えられてきました。ヨーロッパなどでは、すでに各国のグリッドが連結され、発電量の変動を送電網全体として吸収していますが、今後さらに世界各地でこのような送電網の連結を進めていかなくてはなりません。
 二つ目が、私が提唱する「ベーリング海峡ダム」構想です。北極圏の氷雪の面積が、CO2の濃度を除き、地球の平均気温を決定する最も重要なファクターであることが判明しました。そして、ベーリング海峡から北極海に流れ込む夏季の高温の太平洋水が北極海の海氷面積減少に大きく寄与していることも分かりました。私は、ベーリング海峡に開閉式のダムをつくり、この太平洋水を止めて北極海氷を回復することを真剣に検討しておくべきだと思います。
 そして三つ目が炭素固定装置の開発です。大気中に二酸化炭素を排出しないで、地中や水中に封じ込める技術として、二酸化炭素の回収、貯蔵(CCS) があります。また、現在焼却している多くの有機ゴミを細粒化して燃やさずにとっておく技術としてBHCS(爆砕加水分解によるバイオマス再利用)があります。炭素の固定に費用が支払われるようになると、このような技術の普及が進むことでしょう。

― 日本の世論喚起にむけて ―
 世界中で気候変動を深刻な問題だととらえる人が増えています。しかしながら、ある国際的な調査によると、ここ数年間で、ドイツやオーストラリアで気候変動を「とても心配」とする人が、十数パーセントから40%弱へと倍増しているににもかかわらず、日本では逆に34%から26%に下がっています。これは、気候変動に関する正確な情報が国民に伝わっていないことを意味しており、今後日本が様々な地球温暖化対策を行っていく上で国民の合意が得られない可能性も出てきます。正しい世論の醸成が必要です。これまで私は、地球温暖化に関して市民へ情報を提供するために本を書いてきました。ぜひ一度お読みいただきたいと思います。
(ライター/斎藤紘)

山口総合政策研究所
TEL/06-6330-6721 
Eメール/katsuya1201@u01.gate01.com
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http://yamaguchikatsuya.net/


水処理施設の排水を90%原水に戻す
『電気極性転換イオン濃縮装置』を開発

社長が自ら発明を先導
資源の有効活用に貢献


 水処理装置や工業用洗浄装置などのクリーン化技術の進化形を追求する長野県茅野市の『株式会社オーセンアライアンス』が、精密半導体工業や医療現場、食品工場、研究機関などの水処理システムに組み込まれた水処理施設であるRO(Reverse Osmosis)装置から排出される大量の排水を最大で90%原水に戻し、再利用できるようにする日本初の『電気極性転換イオン濃縮装置(AEDR)』を開発した。技術系の代表取締役佐藤匡也さんを中心に同社の技術スタッフが発明し、特許出願した技術をベースに製品化した。原水の購入量を大幅に低減させるなど導入効果が大きく、有限な資源の有効活用化にも貢献する画期的な装置で、同社の技術力の高さを示すものだ。
 大半の水処理システムに組み込まれているRO装置は、水中に含まれる有機塩素化合物などの不純物や重金属イオンを2nm(10億分の1m)以下の孔を持つ濾過膜である逆浸透膜(ROメンブレン)で除去し、高純度の水を精製する装置で、逆浸透膜濾過装置とも呼ばれる。逆浸透膜は、濾過膜の一種で、水に圧力をかけてRO膜を透過させ、透過水と濃縮水に分離する。1950年代にアメリカで開発され、多様な産業で水のリサイクル装置に採用されている。
「世界中で水処理装置は数多く稼働し、ほとんどの水処理システムに、RO装置が組み込まれています。日本でもビール工場、半導体工場、食品工場など幅広いシーンで24時間稼働をしています。しかし、RO装置は原水として入った水の約70%しか処理ができていません。30%の水は不純物を濃縮した濃縮排水として排水されています。当社は7年前から、半透膜を利用して水を浄化する ROシステムなどの工業用水ソリューションでリードするアメリカのAgape Water Solutions社の技術者と水処理装置の大量の排水を低減させる方法について研究を進めてきました。その成果として結実したのが『電気極性転換イオン濃縮装置』です。ユニット化して販売を開始しました」
『電気極性転換イオン濃縮装置』は、RO装置から排出される大量の排水を、イオンを選択透過させる膜で膜の持つ電荷によってイオンの流れをさまたげたり、膜の通過を可能にしたりするイオン交換膜と電極の複合ユニットで水質を改善する仕組みだ。30%もの濃縮排水を最大で90%原水に戻すことができ、約97%の原水の有効活用を可能にする。
 導入する場合も、大規模な改造が不要で、RO装置自体を入れ替える必要も無く、既存のRO装置に配管改造で取り付けるだけで、稼働させることができる。稼働は二台のポンプと直流電源装置で行うが、処理水を高圧にすることが不要なので、消費電力は極めて小さく、一時間当たり3000Lの排水を処理する処理装置で一時間当たりの消費電力は1・2Kw/hだ。また、特別なメンテナンスは必要なく、フィルター交換と3~5年に一度、ユニットを交換するだけで運用することができる。
 サイズは、処理能力毎時2200ℓの最小サイズから10000Lの最大サイズまで揃えた。既存のRO装置の形状や大きさに合わせたカスタマイズも可能だ。受注から最短5ヵ月程度で納品できる。
「『電気極性転換イオン濃縮装置』の用途は、原水の購入量の低減対策だけでなく、半導体工場や飲料工場などの大量に水処理を行っている工場の環境対策、 排水処理の負荷を低減させる対策、井戸水の取水制限がされている場所での水の効率的使用の向上など多岐にわたり、有限な資源の有効活用化、CO2排出量削減にも貢献できる装置です」
 同社は茅野市に拠点を置き、神奈川県相模原市に東京営業所をもつ水処理関連の装置や消耗品の開発に取り組み、超純水装置としてRO逆浸透膜、純水装置、連続電気再生式純水システム、海水淡水化装置、地下水の飲料化装置、災害用飲用水製造装置、イオン交換樹脂、カートリッジ純水器、各種フィルターなどを製造、販売してきた。
 中でも、逆浸透膜を使用し水中のイオン類や有機物を除去する「コンパクトRO装置」は、自動車部品加工工場やプリント基板製造工場、メッキ加工工場、製薬会社、病院などで洗浄工程の品終洗浄用水や清涼飲料水製造用水、メッキ・電着塗装前の洗浄用水、実験用水などの用途に採用されている。イオン交換樹脂は半導体製造工程や飲料製造工程など純水を使用する場所で使われている。プールの水などを飲料水として再生できるコンパクトサイズの災害用飲用水製造装置は災害時など水が不足した場合に活躍する。
 こうしたクリーン化技術の最先端に位置するのが『電気極性転換イオン濃縮装置』だ。その開発を先導した佐藤さんはこれまで、技術スタッフと力を合わせ、精密ろ過膜(MF膜)を利用して水を濾過し、クリプトスポリジウムなどの耐塩素性病原微生物を除去する「水濾過装置」や、被洗浄物に対する洗浄力を向上させる「洗浄装置および洗浄方法」を発明、その発想力と創造力、技術力が製品の先進性を支える。
「当社のクリーン化技術は、医療現場、超精密工業、水処理業界など様々な分野で活躍しつつあります。刻々と変わる世界の技術、世界のニーズに対応し、これからもクリーン化技術で世界に貢献をし続けていきたいと思っています」
(ライター/斎藤紘)

株式会社 オーセンアライアンス
TEL/0266-82-6550 
Eメール/info@authen-alliance.co.jp
ホームページ 
https://www.authen-alliance.co.jp/


ICTで取引先とのやり取りを管理
テレワークに有効なシステム開発

チーム内で情報を共有
多岐にわたるメリット


 ICT情報通信技術やクラウドコンピューティングを活用した多様な企業サポート事業を展開する『アイデン株式会社』は、代表取締役菅原孝さんが標榜する「未来に笑顔を創る企業」に違わず、業務改善支援サービスで提供するシステムを導入した企業に笑顔をもたらしてきた会社だ。その象徴が2021年11月に提供を開始したクラウド型サービス『TeamManager(チームマネージャー)』だ。オフィスに集まることなく、取引先とのやり取りをチームメンバーで共有できるシステムで、企業の働き方改革で推奨され、コロナ禍で普及が加速化したテレワークの効率向上に大きく寄与する。
 菅原さんは個人事業で大手家電量販店やゲームセンターなど様々なクライアントの業務を受注する企業のソリューションパートナーとして活躍していた2008年、サーバーなどの機器を企業内に導入して運用するオンプレミス型の『TeamManager』の原型となるパッケージシステムの取扱いを開始、そのシステムをベースに新たな機能を加えて2021年『TeamManager』というブランドを立ち上げ、クラウドサービスとして展開することにした。 新しい『TeamManager』は、組織内のコンピュータネットワークを活用した情報共有のためのアプリケーションであるグループウェアと業務管理システムで社内業務を効率よく管理することができ、取引先とのやり取りを見える化し、グループ内で共有でき、データが自動的に蓄積されるシステムだ。
 具体的な機能は、大きく分けて四つある。
「コンタクト管理機能」は、取引先とのやり取りのメールやFAXをそれぞれコンタクトという単位で扱い、コンタクトの情報はチームで管理することができ、離れた場所にいる従業員同士でもその情報が共有できる。取引先とのやり取りの情報を仕分けしファイリングして管理でき、そのデータは自動で蓄積される。
「ラベル機能」は、一つひとつのコンタクトに対して複数のラベルを付箋のような感覚で貼ったり、剥がしたり、コメントを付けたりしてタスク管理が容易にでき、コンタクト情報を瞬時に引き出すことができるほか、種別管理などにも利用可能だ。
「案件管理機能」は、複数のコンタクトを案件という単位で管理することができ、その案件単位で進捗の管理をすることもできる。また、一つのコンタクトに対し複数の案件を紐づけることも可能だ。
「グループウェア機能」では、スケジュールや施設管理、個人メール、社内メッセージ、ワークフロー、掲示板、ファイル管理、アドレス帳、社員リスト、タイムカード、在席情報など広範囲の情報を共有できる。今後は、経費精算機能や電子帳簿保存法対応等の追加機能の対応も進めている。  
 菅原さんが挙げる『TeamManager』導入のメリットは多岐にわたる。
「チームマネージャーというように、取引先とのやり取りがチームメンバーで共有できるのが最大のメリットです。メールやFAX、打合せのメモなどの情報を共有できるので、チームメンバーの仕事の進捗が把握しやすくなり、フォローがし易く、応援や交代がし易くなります。このメリットの帰結として、オフィスの場所や広さの制限に関係なく、集まることなく、テレワークのようなどこでもオフィスが実現できることになります。このほか、ファイリングや転記を極端に減らすことができますし、メールやFAXデータの整理時間を大きく減らすこともできます。バインダーでのファイリング、ファイルサーバーへのデータ移動を減らせるなど、ペーパーレスはもちろんのこと、事務系作業の50%効率アップも夢ではありません」
 菅原さんは、事業所の規模別のメリットも指摘する。
「事務員一人が『TeamManager』を利用するような小規模な事業所の場合、事務員が急な休みが必要になっても、取引先とのやり取りや進捗の最新情報は常に『TeamManager』に保存されているので、安心して休みをとることができます。もちろん個人メールを見られることはありません。利用する上では場所の制限はありませんので、複数の場所から『TeamManager』を利用する場合でも、メールやFAXなど顧客とのやり取りを一元管理できます。複数人で『TeamManager』を利用する大規模事業所では、コンタクトや案件の進捗が一目で分かるのでチームメンバーヘの確認が少なくなります。ファイリングする頻度も少なくなり、データを探す時間も少なくなります。仕事の連携が早くなり、会社全体の生産効率が大幅に上昇します。また、 『TeamManager』を基幹システムや会計システムなど他システムと連携させることによって、大幅に生産コストを抑えることが可能になります」
 菅原さん高校の電気科を卒業後、夜間大学に通いながら大手情報機器メーカーで働き、26歳で電気設備工事会社に就職。さらにビルメンテナンス業に転職、ITによる現場業務や事務作業などの効率向上方法を考案。2002年に個人事業主となり、大手家電量販店やゲームセンターなどの業務オペレーションのシステム化に貢献。2008年に法人化を果たし、『アイデン』を立ち上げた。取引先の事業拡大に伴い、会計システムやネットワークを整備する機会の増大に対しては、自らシステムやインフラを構築した。この経験を生かし、ビジネスとしてシステム開発やIT機器の販売、ネットワークの保守など幅広いジャンルの仕事を手がけるようになった。
 現在、同社は、ITコンサルティングや業務改善コンサルティング、システム開発、サーバー構築と管理、モバイル導入支援、LAN工事、電話・TV工事、監視カメラ工事、情報通信設備やネットワークの保守、データ復旧・破壊、PC入れ替えや修理、IT機器やサービスの販売、受発注業務や入力代行、 情報通信コスト削減支援など幅広い事業を展開。さらには、先に発表したクリーンマネージャーⓇと『TeamManeger』を合わせて企業の課題を解決する「BMMS(ビームス/Business Management Solution System)」を展開し、中小を問わすあらゆる規模の企業の課題解決に取り組んでいる。今回紹介する『TeamManager』には、菅原さんの技術力と経験が色濃く投影されている。
(ライター/斎藤紘)

アイデン 株式会社
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私淑する思想家の言葉を胸に秘め
ウィズコロナ時代に積極的保育貫く

自己啓発に繰返し読み
保育の課題に向き合う


 コロナ禍の発生から三年目の年が明けた。完全に収束する日は来るのかという猜疑心、また未知のウイルスが猛威を振るうのではないかという警戒感が解けぬまま時間が過ぎていく未曾有の事態の中、明治、大正、昭和の激動期に生き、その言説が各界の指導者層に大きな影響を与えた稀代の思想家中村天風氏の「どんな逆境にあっても、心を積極的にして生きれば、人生は好転する」などと説く言葉の重みを噛みしめ、実践しているのが幼保連携型認定こども園『大東わかば保育園』を45年間運営してきた園長、山本良一さんだ。「天風語録を読み返す度に、ウイズコロナ時代の心の持ちようが見えてきます」と語る。
 山本さんは、早くから福祉の道を目指し、関西学院大社会学部社会福祉・社会学コースでは福祉理論を包括的に学び、児童相談所勤務を経て保育の世界に進んだ後も幅広い知識の吸収と思索による自己研鑽を重ねた。その努力は、「乳幼児期は子どもが生涯にわたる人間形成の基礎を培う極めて重要な時期であり、家庭や地域の子育て力の低下が指摘される中で、保育所における質の高い養護と教育の機能が強く求められている」との認識に基づく。
 自己研鑽の過程で強く影響を受けたのが、在野の教育家、和田重正氏と思想家、ヨガ行者、自己啓発講演家でもあった中村天風氏(1876~1968年)だ。2016年に刊行した著書「子どもたちの輝く未来のために」の中でこの二人に触れた文章から、影響の大きさが伝わる。
「約40年前から約15年間、あしかび全集をはじめ、和田重正先生のほとんどの著書を読みましたが、『葦かびの萌え出ずる如く』の中の『空気のように』『本心を生きる』『目を開けて』『祈りましょう』『生きるとは選択である』『今が一生』『今すぐ立派な人になれる』『美しい心』『良いことはする』『安心してまごころを丸出しに』『心配することはない』『奇蹟的な問題解決力』などの文章です。これらの文章を200回、300回と読むことによって変革を徐々に体験したように思います。そして平成14年11月3日からは中村天風氏の講演集(著作及びCD)を読み、聴くことを繰り返しています。和田先生の文章を繰り返して読むことによって得られた変革が、中村天風氏によってさらに力強いものになったことを覚えます」
 人間が本来生まれながらにもっている「いのちの力」を発揮する具体的な理論と実践論として中村天風氏が提唱した「心身統一法」を普及啓蒙している公益財団法人天風会によれば、中村天風氏は明治9年、華族に生まれながら、軍事探偵として満州へ赴き、日露戦時下めざましい活躍をする。死病を治すため欧米、インドを放浪。その間、コロンビア大学で医学を学び、また日本人にして初のヨガ直伝者となる。 帰国後、東京実業貯蔵銀行頭取をはじめ、大日本製粉(現・日清製粉)重役となったが、大正8年、一切の地位をなげうち、辻説法に転じる。 その波乱の半生から得た「人生成功の哲学」は、触れるものをたちまち魅了し、皇族、政財界の重鎮をはじめ各界の頂点を極めた幾多の人々が「生涯の師」として心服した。
「天風哲学は観念要素の更改、積極観念の養成、神経反射調節をその教えの三本柱とし、科学的であり、肉体から魂に至るまでを救おうとする意志に貫かれたものです。私にとっては、わかりやすく、生きる意味を深く知ることができるとともに、混迷状態にある現代に生きる多くの人を救う力のあることを確信できる希望の哲学であると思えるのです」
 激動の時代に当時不治の病であった肺結核を発病し、心身ともに弱くなったことから人生を深く考え、人生の真理を求めて欧米を遍歴した中村天風氏が残した膨大な語録の中で、目に見えぬウイルスが世界を震撼させたこの時代を生きる指針になると山本さんが考えるのは次のようなものだ。
「絶対に逃れられない天命的なものばかりが人生に襲いかかるんじゃない。多くの人が苦しみ悩むいわゆる運命は、宿命なんだ。宿命というのは人間の力で打ち拓いていくことができるもの、絶対的でない相対的なものなんだ。ところが今の人は、自分の努力が足りないことは棚に上げて、どうにも仕様がないというのである。そういう人間が人生に生きるとき、ただ偶然ということのみを頼りにして、その結果自分じゃ気がつかないが、いつか自分の心が迷信的になって、すぐ神や仏にすがりつこうとするのである」
「感情というものは、その種類がいかなるものであろうと、我々の肉体や人格に影響せずにはいられないようにできているのである。だから常に感謝と歓喜という積極的な感情を持っていれば、肉体や人格に積極的な、非常に大きな、良い影響を与えるけれども、反対に、怒ったり、恐れたり、悲しんだりする、消極的な感情や情念は、実に悪い影響を持ってくる」…。
 こうした学びの積み重ねから、山本さんは保育園を取り巻く社会的環境も考慮に入れて「積極的保育」という独自の保育論を確立した。
「積極的保育とは、現実的な諸問題にとらわれずに、子どもの力を信じて伸ばしていくことを第一に考え、安心、信頼、感動を重視して保育に取り組む姿勢のことです。現実的な諸問題とは、行政への書類提出、各種審議会や保育団体などからの文書、研修会の案内、研究機関などからのアンケートなどへの対応、不審者対策、感染症対策、虐待問題、情報公開、業務の記録化など保育の第一線が直面する事務上の様々な問題を指します。この状況の中で、園長が強い心を持って保育士などと力を合わせ、保護者や地域の住民の理解を得ながら保育に全力で取り組む姿勢です」
 現在『大東わかば保育園』では、約110人の子どもが在籍し、保育教諭、看護師、栄養士など合わせて約25人のスタッフが保育を行っているが、運営の隅々まで「積極的保育」が貫かれている。
(ライター/斎藤紘)

社会福祉法人 弘法会 認定こども園 大東わかば保育園
TEL/072-878-4121


福祉ヴィレッジ構想に光る目的意識
精神障がい者の職住近接環境を構築

空き家の築古住宅利用
就労支援の作業所開設


 精神障がい者が安心して暮らせるグループホームと、心身に障がいがある人が軽作業で収入を得ることができる就労継続支援B型の作業所で構成する職住近接の「福祉ヴィレッジ」の構築を立案し、着実に形にしてきた経営者がいる。「人に寄り添い、共に生きる」を社是に掲げる愛知県半田市の『合同会社やさしい』の代表社員野田直裕さん。グループホームに利用した建物は、空き家となったしっかりとした造りの築古戸建て住宅で、増え続ける空き家を有効活用する先駆的な取り組みでもある。今後、職種転換などで福祉事業を目指す事業者に施設運営のノウハウを提供して支援し、「福祉ヴィレッジ」の輪を広げていく構想も描く。
 精神障がい者向けのグループホームは「ぬくもりのさと」の名称で、半田市内を中心に五カ所に造った。各ホームの定員は4人、全体で20人を受け入れることができ、ほぼ満杯の状態だ。
「いずれも空き家だった築古戸建て住宅を借りてリフォームした新しい住空間で、親しみすい民家の中で心おだやかに過ごすことができます。ゆったりとくつろげる共有スペース、窓から見える庭の景色で心が落ち着きます。入居者の世話をするスタッフは40人いますが、みんな福祉に対して熱い想いを持ったおだやかな性格の人ぞろいです。その中のサービス管理責任者は、入居者の個別支援計画を作成して、その人のなりたい自分を応援しています。ときには利用者さんの相談にのり、自分で問題解決ができるようにサポートもしています」
 このグループホームの運営で最大の特長といえるのは、入居者の体調管理に力を入れていることだ。
「これまでの障がい者向けグループホームでは、入居者の体調管理が盲点となっていました。福祉先進国といわれる北欧のスェーデンやデンマークなどの国々の医療と福祉の連携によるグループホームの運営をモデルに、専属の看護師一人を配置して、受診同行や入居者全員の体調を管理しているほか、地域の病院や訪問看護ステーションと連携し、精神面のケアも行っています。入居者が高齢化していけば、こうした体調管理は一層重要になってくると思っています」
 就労継続支援B型の事業所は、2021年10月にグループホームの一つに近接した場所に開設した「シャルール」。フランス語でぬくもりを意味する。野田さんは、三階建てのマンションの一階の、同じ就労継続支援B型事業所として使われていた部屋を借り、リフォームして、いずれも30畳ほどの作業室と多目的室兼食堂を設けた。
 就労継続支援B型事業所は、難病のある人のうち、年齢や体力、精神状態などの理由から、企業などで雇用契約を結んで働くことが困難な人が雇用契約なしに軽作業を行い、生産物に対する成果報酬として工賃が得られる障害者総合支援法に基づく福祉サービス。
「作業所の作業は、女性はアクセサリーづくり、段ボールの組み立て、筆記用具のねじ締めなど、男性の場合はグループホームの室内の消毒や室外の清掃、草取りなどです。女性の作業の多くは業者から受注する作業です。アクセサリーは、障がいのある人やその家族がアクセサリー作家になれる仕組みをつくったブルーメッセージというブランドで、特殊なシートにクリスタルなどで装飾して体に直接貼る、新感覚のブライダルアイテムとして注目される3Dボディジュエルなどを作っています」
 現在、グループホームで使う食材は、食材配達事業を全国展開している事業者から仕入れているが、野田さんは今後、地元の農協や漁協などとタイアップして、地場の野菜や肉、魚介を仕入れて、その配達を作業所の女性の作業にする地産地消の取り組みも考えている。
 野田さんは長年、不動産管理会社に勤務する中で、 空き家が増え、古い家は使い捨てのように壊されていく各地の現状を目の当たりにして、「もったいない。なんとか活用できないか」という思いをずっと抱いていたという。また、知的障がいと視覚障がいを持つ親類がいたことから、障がいのある人が自立して生活できるグループホームがあれば、家族も本人も将来に対する不安が軽減できるとも考えていた。加えて、海運業や醸造業で大いに繁栄した半田市には古いながらも立派な造りの建物が空き家になって残っていることに着目し、生まれたのが空き家を精神障がい者向けのグループホームに利用するアイデアだった。
 野田さんは、一連の活動が軌道に乗ったことについて、2016年に施行された障害者差別解消法で施設を建設する際の大規模な住民説明会が必須ではなくなり、プラスに作用したことと、かつての豪商が篤志家としてボランティア活動を自費を投じて積極的に行うなど半田市周辺の福祉を重視する地域性に助けられた面もあると思っているが、その手法の斬新さと実行力で存在感を高め、福祉事業を模索する事業者から相談を受けるほどだ。
「コロナ禍で仕事が減り、国の事業再構築補助金を使って福祉事業を立ち上げたいという事業者の方から相談がありました。自社の土地に施設を造って運営する予定ということですが、運営のノウハウや行政手続きなどについてアドバイスしました。これからは、福祉事業のノウハウを知ってもらう顧問的なアドバイザーとして活動していくことも考えていましたので、その第一歩となる相談でした。行く行くは、志を同じくする事業者と情報を共有しながら、福祉ヴィレッジの輪を広げていければと思っています」
 課題を解決する強い意志と明確な目的意識が、野田さんの活動の推進力だ。
(ライター/斎藤紘)

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