ビジネス最前線 2011年度版

特許を取得した製本技術を活用し、耐久性・品質の高い本づくりを行う「マエダ印刷」。
自分の歴史、思い出をかたちにするサービスを次々と生み出している。
社長の熱く、真っ直ぐな想いが事業の拡大をけん引している。

　自分の人生の足跡を一冊の本にする『和（なごみ）自分史』を制作するサービスを行っている静岡・浜松市の印刷会社「マエダ印刷」。長い歳月をかけて歩んできた道、家族との温かい思い出、たずさわってきた仕事などを形として残せると人気だ。同社は新たに『仲間本（なかまぼん）』の販売を開始し、注目を集めている。
『仲間本』とは世界でたった一つの仲間達だけの限定本。例えば、サークルの活動記録やメンバー同士の想いを綴り記念の一冊として。また、共に過ごした数々の思い出の写真を文章とともに掲載し、寄せ書き用のページも追加できるので仲良しグループの思い出アルバムとして最適のアイテムだ。同社の特許製本により、非常に耐久性があり年月がすぎてもバラバラにならない。赤い糸で綴じられるという演出も素敵。インターネット市場（楽天市場）上で販売しているため、自費出版とは異なり、誰でもリーズナブルに、必要に応じて気軽にオーダーできるのも特徴だ。パソコンが不得意な人もマーカーペンを使ったり写真の切り貼りをしたりして、手書きで作った原稿を同社に郵便場合でも、同じ手順を経て仲間本を完成させることができる。定型のレイアウトや規制がなく、希望のレイアウトで作成できる。もちろん、表紙も自分でデザインをもちいることが可能。最近では、旅先で撮ったスナップ写真を利用し、自分だけのガイドブックをつくる人もいる。留学体験、ウェディングパーティーの思い出としてオーダーする人もいる。
『和自分史』『仲間本』のサービスを開発したのは「マエダ印刷」の社長・前田浩氏。同社は特許製本・特許形態や、誰でも気軽に本を残せる文化の普及を目指している。
「大学の卒業式直前に父親が狭心症で倒れ、就職を断念して帰省し、何もわからないまま印刷屋としてスタートしました。とにかく昔から印刷が大好きで、一生懸命目の前のことに打ち込みました。最初にオフセットカラー4色印刷機械の担当になり、そこで印刷の品質にこだわりました。早く日本で一番のオペレーターになりたかったんです。そこから半年で営業職につき、まだ業界資格であった印刷営業士の資格をいち早く取得し、早速名刺に記載して営業に出ました。その頃のお客様が今でも一番の得意先です。製本技術の特許を取得できたのも、営業経験の25年程の現営業部長に13年ほど前に上製本の素晴らしさを聴き、どうしても自分でその技術を学びたいと思ったのがきっかけです」と、印刷・製本技術への想いを熱く語る前田氏。同社の独自形態により、耐久性に優れ、オリジナリティーがあり、一冊からでも製本できるという『和自分史』『仲間本』。〝本づくり〟〝思い出を一冊の本として残す〟ということを身近な存在にしてくれる、画期的なサービスの登場だ。今後も、インターネット写真管理会社と共同開発する幼稚園向けのアルバム、冠婚葬祭を節目とするメモリアルブックなど新しい企画が準備されている。
（ライター／奈須美子）