井形慶子 イギリス
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「生涯一つの入れ歯」歯科技工士宮野たかよし氏の入れ歯作りの姿勢です。

専門技術者の手で丁寧に作成されていく。

 
歯科技工士「宮野たかよし」物語 (海苑社)
1,050円(税込)
従来の入れ歯のような違和感が無く、スルメが噛める!
驚異の金属床義歯はいかにして誕生したのか
従来の入れ歯の概念を超えた金属床義歯『MTコネクター』。入れ歯は他の治療法に比べ安全というのがメリットだが、 欠点も多い。その欠点をすべて克服したのが『MTコネクター』なのだ。
その世界に誇る『MTコネクター』はどうして生まれたのか。生みの親である歯科技工士、宮野たかよし氏の軌跡を追う。

ピーナッツとスルメで 仕上がりをチェックする入れ歯

「入れたその場でスルメが噛める、しかも外見から入れ歯とわからない」。そんな常識を超えた入れ歯を作る歯科技工士がいる。「大阪歯科センター」の宮野たかよし氏だ。宮野氏が作る入れ歯は、実は従来いわれる入れ歯ではない。かといってブリッジ式でもなければインプラントでもない、まったく新しい従来の入れ歯を進化させた金属床の義歯なのだ。名付けて『MTコネクター』という。
 この『MTコネクター』を仕上げるときには「ピーナッツチェック」と「スルメチェック」で出来を試す。まず、『MTコネクター』が完成する一歩手前の、壊れやすいロウで土台が作られている段階でピーナツをかみ砕くことができるかチェックする。土台が無事であれば、力が分散された優良な義歯だと証明できる。この「ピーナッツチェック」をクリアできれば「スルメチェック」で仕上げに進む。お茶で味覚を試し、スルメをすりつぶせるかテストするのだ。わずかなかみ合わせのずれがあってもスルメは噛めない。こうして完成した『MTコネクター』は「はめていることも忘れるくらいの感覚だ」という声があがるくらいのフィット感があるのだという。
 この『MTコネクター』は他の入れ歯と違い、留め金が無くピンクの土台もない。見た目はただ歯が並んでいるだけのようで、とてもコンパクト。金属床が維持のために付いているが、外見からは見えないように作られている。アタッチメントやマグネットのような余計なものは、いっさいついてなく、それどころか、これ以上省けるものはないくらい部品を省いた、限りなくシンプルな義歯なのだ。それでもしっかり口にはまり、落ちたりはずれたりすることがないのは、『MTコネクター』が特殊な角度で口にはまり、粘膜に支えられているから。したがって、残存歯ではなく歯ぐきに負担がかかりはするが、噛めば噛むほど歯ぐきが鍛えられていく。従来の入れ歯のように歯を痛めることがなく、むしろ歯ぐきを引き締め、健康にするのだ。


世界基準をクリアした金属 最高品質のウィロニウムプラス

『MTコネクター』を支えるのは僅か0・35ミリの非常に薄い金属床。口の中で違和感が無く、熱などの触感も伝わるのだ。この金属床はアレルギーを起こさない金属素材で、世界基準をクリアした最高品質の金属だ。この金属はドイツのBEGO社のウィロニウムプラス(商品名)というコバルトクロム合金で、その品質と安全性は世界中で高く評価されている。宮野氏が『MTコネクター』を開発することができたのもこの金属があったからだという。この金属は義歯に使うと、おいしく食べられ発音もしやすく、匂いを吸着せず、口臭がない。細部の加工がしやすく、一人ひとりにあった入れ歯がつくれるという特色をもっている。この金属素材は日本の機械では加工ができず、専用の機械が必要となるが、しかし、それだけに安定して丈夫な良い義歯ができる。ただ、この金属素材は高額で、保険診療で扱えず、良いものを分かってくれる方へむけた自費診療となっているが、良い義歯を求める患者様は皆この『MTコネクター』を選んでいく。
 この『MTコネクター』のアイデアは金属の被せものの技術からヒントを得たものだという。宮野氏は被せものと義歯を合わせるというコンセプトの入れ歯をつくり、知人にその金属床の新しい義歯を試してもらうと、「まるでトマトの皮がはりついているようで、従来の入れ歯のような違和感が無く、しゃべりやすい。この入れ歯なら欲しい」と喜ばれたという。
『MTコネクター』は、残りの歯が健康であれば、自分の歯を削ったりすることをせずに、歯のないところに『MTコネクター』を入れるだけですむ。歯が1本なかったり、抜けたりした場合、通常はブリッジという差し歯や、インプラント治療をする場合が多い。しかしブリッジの場合は、健康な横の歯までもかなり削らないとブリッジができない。インプラントの場合は、歯ぐきの下のあごの骨に穴をあけて、ネジ状の土台を入れなければならない。どちらも患者にとっては大変な負担となる。しかし『MTコネクター』ならば、口の型取りをするだけですむのだ。


『MTコネクター』をささえる 情報伝達システム

 この『MTコネクター』は高い評価を得たが、開発当時は経験の浅い歯科医もいて、宮野氏は指導に忙殺されたという。宮野氏は歯科技工士と歯科医は車の両輪のような関係で一方が経験が浅いと仕事がうまく回らないのではと考えるようになる。そこで宮野氏は患者様と歯科技工士、歯科医がコミュニケーションをとる為に、大阪歯科センター内に歯科医院を開設している。情報の伝達システムも、患者が歯科技工士に相談し、歯科技工士が歯科医へ患者さんの意向を伝えるシステムなので、歯科技工士に患者と歯科医の情報が集中し患者の要求を満たす義歯を作れるのだ。これにより宮野氏はよりニーズにあった入れ歯を作りやすくなった。宮野氏の『MTコネクター』の技術を、患者や歯科医とのコミュニケーションがとれるこの経営形態が支えているのだ。
 宮野氏は、「私は、一度作った義歯は二度と作れません」という。一つひとつ真剣勝負で作っているからだという。これは、逆を返せば宮野氏の義歯は一生使えるものだということだ。もちろん使い続ければ磨耗し、ずれも生じてくる。宮野氏はそうしたときは「義歯は磨耗しますが、消耗品ではありません。いくらでもメンテナンスができます。そして大事に使えば使うほど、口になじんできます。磨耗してきたら、そのつど義歯を修理し、調整して、使ってほしい。自分に合う義歯に調整しながら使い続けて、はじめて義歯は生きてきます。自分の体と一体になるのです。そして一生大事に使い続けてください」という。
 自分の体と一体になった義歯は、口腔や体に悪い影響をあたえない。逆に口腔に合わない入れ歯をずっと入れていると、入れ歯が本来あるべき正しい位置にないために、ものが噛みにくかったり、肩こりや頭痛の種になっていることがよくある。人体の一部として日々の生活の中で重要な役割をする入れ歯が間違った位置にあれば、体に害を及ぼすのは当然ともいえる。入れ歯が悪いために口元がゆがむと、肩がゆがみ、次に骨盤もゆがんで、足や腰まで影響するのだという。  また宮野氏は義歯作りを「家づくり」をするぐらいの大事業だと考えている。まず基礎となる歯ぐきを改善し、その患者の将来を見据えて義歯の設計をする。将来、残っている歯が抜けたとしても追加できる仕様で作るので、一生使える義歯になる。だから一生に一度の大事業である「家づくり」にたとえられるのだ。
 この宮野氏の『MTコネクター』は理想の義歯だ。しかし完成されたものではない。宮野氏は今でも改良を続け、よりよいものを追求していく。『MTコネクター』は進化する義歯なのだ。一人でも多くの歯科医師、歯科技工士にこの技術を広めることが宮野氏の使命なのだという。
(ライター/本名広男)
 
株式会社 大阪歯科センター
TEL/06-6708-1088
   
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