ヒットの予感!! 2019


イギリス生活情報誌 
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通所介護事業所、高齢者向け賃貸住宅、輸入衣料雑貨と喫茶の店と3つの異なる事業を展開する佐賀県伊万里市「株式会社メロウズ」の代表、浦山陽子さん。2011年に開設した「指定通所介護事業所 かさね家」では、高齢者が実際に暮らしていた平屋の住宅をそのまま利用して、利用者が自宅に近い環境で、できるだけマイペースで過ごせるように支援してきた。その後、利用者を自宅で介護している家族へのケアが必要と感じ、介護家族専門カウンセリング「メロウ」、輸入衣料雑貨と喫茶「メロウ」をオープン。カフェオーナーとなり、ここで利用者の家族の介護相談も受ける。最近では口コミで評判になり、地域のなくてはならない憩いの場になったという。


時代や人に流されず自らを信じてキャリアを重ねた



輸入衣料雑貨と喫茶「メロウ」の外観。
─カフェはなかなか繁盛なさっているようですね。
浦山 おかげさまで。来ていただいた方にゆっくりお過ごしいただいています。時間帯によっては、混み合って従業員はてんやわんやになりますよ。

─新しく店を始めても、このように繁盛させるのは、大変難しいことだと思います。生き残る秘訣と言ったようなものは、何かあるのでしょうか。
浦山 ええ。何かで読んだのですが、会社を設立しても、5年後、10年後には9割なくなる、という……。でも、これは当然のことで、ビジネスを立ち上げるところまでは、誰でもできるじゃないですか。日本人というのは昔から真似や改良が得意でしょう。コピーしてちょっと改良して、というのも、これまた誰でもできるんですよ。けれども、東京で何かが当たりました、それが地方に普及してきました、となった時には、えてして東京ではもう(ブームが)終わってる。それを延々と繰り返していても、行き詰まるのは目に見えているんじゃないでしょうか。

─流行はあえて追わない、ということでしょうか?
浦山 先程も言った、いいと思った事を一斉にやるという傾向は、事実としてあると思うんです。メディアも、それを煽るのが仕事だとでも思ってるのか、とにかく「今、これが来ている!」みたいな取り上げ方しかしないでしょう。だからオリジナルが育たない。私は単なるビジネスモデルを超えた生き方の問題として、10人のうち9人までが同じ方向を向いているとしたら、反対側を向いている1人でありたい、と思い続けているんです。


喫茶カウンターと物販スペースが隣接している店内。
─オリジナルが最後は生き残る、と。
浦山 そう信じることも大事だとは思いますけど、それだけでは駄目でしょうね。一生懸命に生き残る、ということだけでは、限度がある。やっぱり、絶えず発展させて行くことを目指さなければ。

─複数のビジネスを同時に展開しているのも、そうした生き方の現れなのですね。でも、大変でしょう。
浦山 いえ、基本的には好きなことをやってるので、大変と思ったことはないです。

─そういう浦山さんの生まれ育ちを、少しお聞かせ下さい。
浦山 聞くところによれば(笑)、産まれたのは神奈川県の川崎市。私が産まれてすぐ、千葉県の流山に越したそうです。私が物心ついた頃は、同じ千葉県内ですけど船橋市にいました。いずれも父の仕事の都合で。10歳の時、埼玉に移りまして、18歳まで過ごしました。なので、埼玉を故郷のように思っている面はあります。

─18歳で埼玉を離れたわけですね。それ以降は?
浦山 まあ転々としてましたけど、初めての一人暮らしは、葛飾区の柴又。あの、寅さんで有名な。28歳まで葛飾区で暮らしました。


取り扱う輸入雑貨。全て浦山さんが仕入れる。
─九州に移られたのは?
浦山 14年前、ということになりますね。

─最初から、こちらでビジネスを立ち上げるつもりで?
浦山 そういうことではありません。直接のきっかけは、父が亡くなったことです。実は両親とも長崎県・平戸の出身なのですよ。それぞれ就職のために関東に出て、そこで知り合ったということらしくて、親戚も多く、お墓もあったので、それじゃまあ、お墓も守ってあげたいし、九州に引っ越すのも悪くないな、くらいの気持ちで。土地の執着もまったくないので、割と気軽に動けるんです。

─お仕事も、色々と変わられたんでしょうか?
浦山 ええ、転々と(笑)。最初の仕事は、エレクトーン教室の先生でした。実は4歳からエレクトーンを習ってましてね。高校生になった頃には、学校出たらこれを教える人になるんだと決めてたんです。でも、すぐに辞めました。

─何かあったのですか?
浦山 子どもに教えるというのが、肌に合わなかったんですね。自分自身、高校出たばかりの18歳で、大人になりきれていないところもあったのだと、今では思ってますけど……。それ以上に、並行してバイトしてたんです。これが今の仕事にもつながる、エスニックの衣料雑貨店。こっちの方がずっと楽しかったんですね。3〜4年、働きましたっけ。


店内のカウンター。相談者のみならず地域の人も浦山さんと話すのが楽しみで、フラっと来てくれるという。
─でも、転職された。
浦山 ええ。なんと言いますか、仕事は熱心にやる反面、仕事に執着心というものがないんですね。仕事が嫌で辞めるのではなく、他に興味が移って転職する。好きなことしかやりたくない、面白くなければ仕事じゃないと思い続けていましたから。一時期は大型トラックの運転もしてたんですよ。

─それはまた……。車が好きだったとか、そういう理由ですか?
浦山 父が大型の車に乗っていて、自分で会社を興したような人だったそうです。なので私も、車に興味がないわけではなかったのですが、実際に免許を取ったのは20歳過ぎてからで、当時の感覚では、むしろ遅い方でしたね。それで最初は、免許を取ってすぐ、軽自動車で仕事するようになりました。そのうち仕入れとか任されて、普通車の、さらには2トンとか。最終的には4トン車にも乗りましたっけ。で、こうなったら大型の免許も取ってしまおう、と。

─ヘルパーとカウンセラーの資格をお持ちで、介護事業にも進出しておられますが。
浦山 父が病気で介護が必要になった時、体力に自信がありましたが、きちんとした介助はまったくできませんでした。その経験から「いざという時役立つように」と、ヘルパーの資格を取りに行く事にしました。


店内で提供する有機栽培の珈琲や紅茶も販売している。
─なるほど。話は変わりますが、メロウという店名について、何か意味などはあるのでしょうか? お教え下さい。
浦山 メロウな音楽とか、言うじゃないですか。言葉の響きが昔から好きだったんですよ。高校生の時、エレクトーンの先生になることが、言わば既定の路線だったのですが、実はお店をやるのも悪くないなあ、と。自分でバーかパブを開けたらいいな、と。その時に、お店の名前は『メロウ』だな、と。

─ずいぶん前から店名については思い入れがあったのですね。
浦山 いえね。実は私のおばに当たる人が、関東でスナックを経営していたんです。とってもお洒落でハイカラな人で、店も一人で切り盛りしてる。身内が言うのもなんですけど、とてもカッコ良かったので。

─なるほど。成人する前に、カフェや輸入雑貨のビジネスに取り組む下地は、すでに出来ていたのですね。ヘルパーの資格をお取りになったのは、お父様の病気がきっかけだと先ほどうかがいましたが、いずれ自分で施設を経営しようと思われたのは、その時すでに、ということでしょうか?
浦山 資格を取る過程で、ということになりますかね。病院や施設に、現場研修ということで出向かされるんです。そうして行ってみたら、なんてひどい職場だろう、と。風呂場で高齢者の頭を叩いたり。もっと問題だと思えたのは、そんなのは一部の職員だけで、その職員だけが悪いんだ、という風には片付けられないということなんですね。職員だって、かなり追い込まれている。いずれにせよ、人生の最後をそんな場所では……。自分だったら行きたいか、自分の親を行かせられるか、と考えてしまいますでしょう。いずれは自分で、これとは違うものを作らないといけないな、と。


介護はいつ自分の問題になるかわからない。カフェに来ている人から今後の介護の相談を受けることもあるという。
─既成の施設の、何がそんなにいけないのでしょう。
浦山 介護というのは本来、プロにしかできない仕事なんですね。ところが国全体が持つイメージから、介護は最低の仕事だという意識を持ってしまっていますし、企業の側でも、そういう人たちを不当に低く見ている。つまりは働く側の意識が変わり、楽しく仕事ができるような環境を作っていかなければ、高齢者が楽しく過ごせるはずがないということですよ。幸い、うちではスタッフにも恵まれ、よい環境を提供できていると思ってます。

─伊万里という場所も、気に入っておられるんですね。最後に少し、地元PRも兼ねて、この町の魅力を聞かせていただけませんか。
浦山 人が住むのには最高の場所ですよ。人口が減ってきているなんて言われますけど、それは、他が多すぎるんです(笑)。ここは手が届く範囲に、すべて揃っている。役所にスーパーに病院、駅。少し歩けば海で、田畑や山に囲まれて、緑も豊富で、気候は温暖。そんな環境ですから食べ物もおいしい。今まで、まるで放浪するような生き方をしてきたのですが、とうとう人生をまっとうする場所にたどりつきました。伊万里に永住するつもりでいます。。




株式会社 メロウズ
TEL/0955-23-5925 Eメール/mellowz501@gmail.com
ホームページ http://mellowz.biz/


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