ヒットの予感!! 2019


イギリス生活情報誌 
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高校を卒業後、地元の銀行に就職。その後は結婚、出産、離婚を経て、進路を空間デザインに定めることとなる。設計施工会社に勤めながらデザインを学び、1996年に個人事務所を開設する。依頼主や関わる人たちの意見や考えを大切にしながらも、時代の潮流を読む豊かな感性で先進的な商業空間を創造してきた折原さん。2011年に「オリハラミキ・デザインオフィス」を設立して法人化すると、その後発表した大手餃子チェーン店のデザインでは、女性客を強く意識した空間に仕上げたことが話題となり、様々な賞を受賞。そして現在、その先進性とオリジナリティが注目される空間デザイナーの一人でもある。


子連れ離婚を契機に、華麗なる転身を果たす



幼少時代より宮城で過ごす。
─宮城県のご出身とうかがってますが、子ども時代の話などを。
折原 私、一人っ子なんです。両親はずっと共稼ぎでした。実は代々の宮城県民ではなくて、父はもともと九州人。三菱マテリアルの子会社で採石の仕事をしていた叔父に頼み込まれて、九州から遠路東北までやってきたと聞いています。最終的には社長業を引き継ぎ、母が経理でサポートしてました。

─やはり採石関係の会社ですか。
折原 そうです。父は九州で炭鉱に関わる仕事をしていて、経験を買われたようなことを言っていました。でも、だいぶ勝手が違う、という話を小耳に挟んだこともありますね。少しずつトンネル掘って行くんじゃなくて、ダイナマイト仕掛けて、どっかーん(笑)。

─それじゃ、子どもが遊びに行くのは無理ですねえ。
折原 それが、案外そうでもなかったんです。自宅と両親の職場は、町の東と西だったんですけど、会社の車がしょっちゅう走ってるので、誰かにピックアップしてもらって、遊びに行ってました。近所の子も連れて行ったり……採石場は、建材用の石を掘り出すわけですが、捨てられた土砂の中から、アンモナイトの化石とか、よく見つかるんです。そういうの集めて遊んだり、そのへんを駆け回ったり。


工事現場で走り回って遊ぶような活発な子どもだった。
─アウトドア派だったのですね。
折原 外で遊ぶのは好きでした。でも反面、地方では珍しい鍵っ子でしたから。近所の子たちはみんな、午後5時になると家に帰るでしょう。私も帰るんですが、その時間だとまだ一人なので、ずっと絵を描いて遊んでました。天気の悪い日とかもね。

─当時から、絵を描くのが好きだった?
折原 好きでしたねえ。でも、将来デザイナーになりたいとか、そんなことはあまり考えてなく……。ただただ、絵を描くのが好きだったんです。

─他に、子ども時代の思い出は、どのような?
折原 両親が厳しかったことでしょうか。一人っ子なもので、逆に、甘やかしちゃいけない、という思いが強かったのでしょうね。両親にしてみれば。なにしろ頭と顔以外は、全部たたかれた記憶がある(笑)。当時は体罰とか、全然問題になりませんでしたし、寒いのに外に出されたり、納戸に閉じ込められたり……私の方でも、当時はそれが普通なのかと思ってましたけど、今の時代でしたら問題になるのでしょうが、後になって思えば、愛情の裏返しでしたね。


多忙な毎日であったが、子どもとの時間は大切にしていた折原さん。
─その後、地元で就職されたのですね。
折原 高校を出て、地方銀行に就職しました。大学行きを直前で辞めたものですから、就職口は銀行くらいしかなかったんです。

─そのお話、できるだけ一部始終お願いします(笑)。
折原 順を追ってお話ししますと、結婚を機に、主人があるオーナーが経営するステーキハウスで店長として店をまかされることになったのです。新しく立ち上げる店だったものですから、ロゴを考えたり、メニューの考案、お店のデザインまで。オーナーから私に「やってみないか?」という話になり作り上げたお店が、今考えれば生まれて初めてたずさわったお店のデザインでした。その時の経験は、お店を作るだけではなく、オープンしてからの運営も絡む貴重な経験でした。

─そのお店は、順調だったのですか?
折原 売上はかなり順調でしたが、主人との仲はあるきっかけがあってうまくいかなくなり、ずいぶん時間をかけて話し合ったのですけれど、最終的には離婚することになりました。

─それで、あらためてデザイナーになろうと決意されたのですか?
折原 金融に戻る選択肢もあったのでしょうけど、はっきり言って、あまり好きな仕事じゃなかったんです。それに子どもがまだ、離婚した時点で2歳半でしたから、この子が一人前になるまで、一生仕事をしないといけない。ならば、自分が好きな仕事をやるしかないなと、改めて思ったんです。


発表と同時に話題となった「餃子の王将」烏丸御池店。一見すると、とても中華チェーンには見えない画期的な空間。
─先ほどの、お店のデザインの経験が、そこで生きた?
折原 そういうことになりますね。自分でデザインを考えた店が出来上がった時の達成感。内装をお客さんに誉めてもらえた時のうれしさは、やはり忘れられませんでした。

─でも、そう簡単にデザイナーになれるわけではないのでは?
折原 まずは本とかセミナーとか通ったりして独学で学びました。縁もあって設計施工のデザイン事務所に就職できたのですが、そこは元銀行員ということで、事務職で雇ってもらえただけの話。自分はデザイン設計の仕事を望んでいたわけですから、経理の仕事は始業前1時間で終わらせ、日中は現場、夜は図面を書く毎日でした。片道80㎞位離れた所に娘と両親がいたものですから、毎日車で2時間かけて通いました。朝4時半に起きて食事の支度をし、6時前に家を出て8時前に出社。夜11時に会社を出て、1時にたどり着き、2時に寝る……。その毎日が2年半続き、バブルの崩壊とともにその会社もとうとう倒産し、行き場を失ったものですから、経験は浅かったですけれど独立しました。

─それは大変でしたでしょう。よく倒れませんでしたね。
折原 はい、寝不足で何回も事故を起こしそうになったりしました(笑)。仮眠をとりながら運転するので、2時間で帰れる道のりを3時間かかったりもしました。


壁に描かれた木々、止まろうとする小鳥。折原さんのオフィス。
─折原さんのデザインが高い評価を受けるようになった理由について、ご自分ではどのようにお考えですか?
折原 私が最初のうちデザインしたものの中で、幸いにも高く評価していただいたのは、バー、キャバクラ、レジャーホテルといった店舗の内装でした。何か共通点があることに気づきませんか?

─ええ。もっぱら男性が利用する場所ですね。
折原 はい(笑)。そういう場所だからこそ、女性の視点から提案されたデザインが珍しかったのだと、自分では考えています。バーとかキャバクラを例に取りますと、豪華とけばけばしいのは違う、というところまでは、男女差など関係なく理解できるでしょうけど、一歩踏み込んで、働く女の子の身になったらどうなんだ、と。そういう視点を採り入れて作った店舗というものは、男性客にとっても居心地の良い場所になるはずなのではないかと。今でも私は、店舗のインテリアを決めるに当たっては、実際に働くスタッフの人たちと会い、色々な話を聞きます。オーナーからは、お店のコンセプト、テーマといったものをじっくり聞くのですが、その過程では参考になりそうなお店を一緒に見学に行ったりもします。

─ホテルも同様ですか?
折原 ホテルでも飲食店でも、私の考えでは、ハードとソフトによって成り立つと思うんです。空間が言うなればハードでサービスがソフト。これは、どちらが欠けても駄目だというのはもちろんですが、ソフトの質を向上させるには、空間というハード面を向上させるのが必要であり、心地良い空気というものも、ハードとソフトが一体となって初めて出来上がるのではないかと思うんです。


時代を的確に読む目、クライアントや関係者の想いをくみ取る優しい目。女性である折原さんが大事にしている目だ。
─そこにデザイナーとしてのやりがいとか、仕事の楽しさもあるわけですね。逆に、この仕事のつらさ、大変さというのは、どういったことでしょうか。
折原 正解がなかなか見つからない、ということですね。それ自体がどれほど素晴らしいデザインでも、環境と寄り添い、合わなければちぐはぐになってしまう。求められることに応えるだけでもダメだし、かけ離れ過ぎてもいけない。どこか目からウロコ的な意外性も必要。全ての人(クライアントやユーザー)が心地良さを体感し、笑顔になれる。そんな答えをいつも見つけたいと思っています。

─この先、どういったことを意識してデザインを追究していきたいと思われますか。
折原 ミレニアム世代の物質欲より、つながりやコミュニケーションを求める志向と、我々の様なバブル世代(私はあまりバブルの恩恵は受けてませんが)の志向とは、確かに明らかに違うところもありますが、違えば違うほど学びもあると思うんです。〝つながり〟をビジネスにしてしまう柔軟性には本当に目を見張りますし、かといって、バブル世代は上質なものを知っており、その知識も素晴らしい。何かこれからは色んな世代や色んなジャンルの人たちが交わって化学反応が起き、又、素晴らしいものが出来ていくのではないかと、秘かに楽しみな気持ちにもなっているんです。





株式会社 oriharamiki design office
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